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DeNAのcomm終了の影でひっそりと終わったあのサービスの敗因

ランチパスポート渋谷版Vol.3 (ランチパスポートシリーズ)

DeNAがLINEの牙城を切り崩すべく展開していたcommのサービス終了が決まりました
開始当初から色々と問題のあったサービスでしたが、ついに…という感じですね。


さて、その影でひっそりとサービス終了を決めたサービスがあります。

「ランチ定期券」というサービスです。


ランチ定期券 - 毎日のランチが全て500円に

ランチ定期券とは

ランチ定期券は500円の月額料金を払えば、提携しているレストランのランチを一律500円で食べられるというもの。
対応エリアは渋谷、中目黒、恵比寿あたりが中心のサービスでした。

一世を風靡した「ランチパスポート」のWEB版というようなサービスで、最盛期は3500人の有料会員がいたようですが、先日、会員向けにサービス終了を告げるメールが配信されていました。先月あたりから新規申込を停止していたため怪しいなとは思いましたが、残念ながらここでフィニッシュのようです。

ランチパスポート渋谷版Vol.3 (ランチパスポートシリーズ)

ランチパスポート渋谷版Vol.3 (ランチパスポートシリーズ)

 

 

そもそもランチパスポートとは

高知県のエリア情報を中心とした出版社「ほっとこうち」が発行したクーポン雑誌。
一冊1000円程度の書籍を購入すると、掲載さているお店のランチを一律500円で食べることができる。

ランチパスポートVol.12

ランチパスポートVol.12

 

 

<お客さんのメリット>
ランチが安くなり、数回使えば1000円分の元が取れる

<お店のメリット>
・掲載料無料で掲載でき、集客に繋がる

<ほっとこうち>
・高知のローカル企業のため自社だけでは全国展開できないが、「ランチパスポート」の商標使用料と独自の自動書籍化システムをパッケージ販売することで、直接取材できないエリアで出版された分も利用料収入が見込める

<出版社>
・商標使用料とシステム利用料は払うものの、自動書籍化パッケージの利用で編集コストを圧縮でき、大ヒット書籍「ランチパスポート」のネームバリューも手伝って書籍が売れる。

このように、四方よしのビジネスモデルだと言われています。


ただし、利用上の制限もあり、それが絶妙のバランスを生んでいるようです。

<利用上の制限>

  • ランチパスポートの期限は3ヶ月
  • 一店舗あたりの利用可能回数は3回まで
  • 一冊の本で使えるのはその当人のみ
  • 食べられるメニューはお店側が決める


一方ランチ定期券は

ランチパスポートをWEB化し、費用を安くすることで、ランチパスポートを購入していた層を抱き込む戦略でした。。

  • 月額500円で色んなお店のランチが500円で食べられる
  • 1ヶ月あたり3回まで利用可能(月をまたぐと権利復活)
  • 一契約で使えるのはその当人のみ
  • 食べられるメニューはお店側が決める

1000円の書籍⇒月額サービス500円
3ヶ月で3回⇒1ヶ月3回(しかも翌月権利復活)

というところが大きな違いで最大のウリとなっています。
サービスとしてのバリューは大きいですが、その分お店の負担も大きいサービスのように見えますね。

私も利用しましたが、その負担の大きさからか、お店によってお得感はまちまちで、1000円ランチが500円になる素晴らしいお店もあれば、600円のランチが500円になり、通常ならついているドリンクがランチ定期券では付かないなど、ほとんど得できないお店もありました。

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ランチ定期券の敗因の推測

私が考える敗因の推測ですが、大きく以下三点かと思われます。

  1. 店舗側のリスクが大きすぎた
  2. 過大な営業負荷と獲得難航
  3. 性急過ぎたメディア露出

これらはそれぞれ連携した要因となっています。


1.店舗側のリスクが大きすぎた

成功したランチパスポートはクーポンの利用に3ヶ月という期限があり、その上で一店舗3回までです。おしなべればおよそ月一回程度となりますので、客単価が崩れるということにはなりません。
しかも、クーポン利用期限が終わっても本が手元に残るため、ガイドブックとしての役割も果たします。本に載ることのバリューが高い飲食業界ではかなり喜ばれているのではないでしょうか。

一方、ランチ定期券は1ヶ月3回しかも毎月復活しますので、3ヶ月では9回のランチ提供が必要です。単純に言ってコストは三倍。客単価の崩れは確実に発生します。
しかも、WEBへの掲載はメニューの提供期間中のみなので、辞めてしまえば何も残りません。

また、ランチパスポートは1000円の元を取るための期間が3ヶ月と長いため、色々な店にチャレンジするだけの時間があり、良い意味で「お試し」需要の取り込みが可能でした。

ところがランチ定期券は、500円の会費が毎月かかるため、元を取るためには必然的に利用頻度が高くなります。利用頻度が高いこと自体は悪くないのですが、ランチは出社日ベースで概ね月20回しか機会が無いわけですし、掲載店舗も少ないので、割引率が良く、人気がある店舗に高頻度に行き、とにかく元を取ってやろう!という心理が働くことは想像に難く有りません。

頑張って料理を提供してくれる協力的なお店ほど、リスクが大きいという悪循環がそこに生まれます。

すると、ランチ定期券来店が多い店舗は費用対効果の悪さから掲載を終了するか、サービスをグレードダウンし、店舗が減りサービスが悪化すれば課金ユーザーも離れていくというスパイラルが発生します。

悪循環の現象学―「行為の意図せざる結果」をめぐって (リベラ・シリーズ (1))

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2.過大な営業負荷と獲得難航

辞めていく店舗が出れば、その分拡充しなければサービスが維持できません。

書籍であれば売り切りなので、次号を出さなければ良いという判断や、十分な掲載数が確保できるまで次号を発行をしないなどの判断も可能ですが、月額サービスの場合は毎月お金をもらってしまっている以上、そういう判断は出来ません。
常に営業をかけ続け、新規店舗の開拓と既存店舗の繋ぎとめをしなければ、会員減に直結します。

しかし、店舗側もリスクと効果を比較して、リスクが過大である事は分かりますので、獲得そのものがかなり難航するわけです。

しかも、獲得できてもお試しで数ヶ月だけ…などの消極的な参入や、オープン直後で少しでも面が欲しいようなバリューの低い店舗ばかりとなる可能性が高いでしょう。

ランチ定期券も営業活動はかなり厳しかったのではないでしょうか。そもそも体制が整わないスタートアップでそれだけの営業コストを維持し続けることは相当困難だったと思われます。

 

3.性急過ぎたメディア露出

上記のような状況が続くと、このような連鎖が発生します。

営業が追いつかない

同じ店に集中する

コストがでかくなりすぎる

お店が掲載を辞める

営業が追いつかない

掲載数が減る

同じ店に集中する

以下繰り返し

つまり、お客様を満足させられるだけのサービスが用意できなくなるわけです。

しかし、この間にも精力的なメディア露出が行われ、スタートアップ系のWEBメディアだけではなく、テレビや雑誌などのマス媒体にも数多く取り上げられ、一時期かなり注目されたようです。


メディア情報 | ラスシア株式会社

しかし、それら媒体を見てきたお客様の多くは、想像よりも整っていない実際のサービスを見て落胆して帰っていたのではないでしょうか。

近年、米国のスタートアップ企業の間で言われているのは、「スケール(拡大)しないことをする」ということです。

サービスが、マーケットに受け入れられる形になっていないのに、焦ってプロモーションに注力し必要以上の注目を浴びてしまうことで、せっかくの見込みユーザーとの接触が残念なものになってしまう。そして、一度残念な体験をしたユーザーは二度と帰ってくることはない。プロモーションの前に目の前にいる少数のお客様の体験を最善にする努力をしようぜということです。

多くのメディア露出によって増えたトラフィックにサービスが追いつかなかったため、結果的にサービスに注目してくれる多くの優良見込み客を逃し、マスに取り上げられ注目を浴びたがため、そのビジネスモデルを実態に即したサービスに改変することができなかったのではないかと思います。

近年、スタートアップ企業周りはだいぶプロモーション環境も整備されてきていて、横のつながりやパブリシティの融通などが活発に行われています。それこそ、昭和のテレビ業界のような、酒の席で仲良くなってそのツテでプロモーションしてという、前時代的な仕事の進み方が逆に幅を利かせているのが日本のスタートアップ界隈の現状です。そんなプロモーションをしやすい環境だからこそ慎重にタイミングを図る必要があったのではないかなと感じます。

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ランチ定期券が与えてくれた学び

ランチ定期券はサービス終了しますが、ランチ定期券の試みは様々な学びを提供してくれました。

  • 店舗の参入メリットの重要性
  • デジタルコンテンツに大事なのは「継続性」
  • プロモーションタイミングが悪いと裏目に出ることがある
  • ランチパスポートはやっぱり良く出来ている

これらの学びを生かして再チャレンジするプレイヤーが出てくると面白いなと思います。

ランチパスポート渋谷版Vol.3 (ランチパスポートシリーズ)

ランチパスポート渋谷版Vol.3 (ランチパスポートシリーズ)

 

 

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