戯れにブログ名を変えてみた
8.6秒バズーカが今日からやるべき一発屋化対策
【公式】8.6秒バズーカー『ラッスンゴレライ』 - YouTube
これだけこすられればもはや仕方ないのですが、先日、ブームになっている「8.6秒バズーカ」のリズムネタ「ラッスンゴレライ」をテレビで見た際、ネタの随所に早くも終わりの前兆が見え始めているように感じました。
そのブーム終焉の要因と今日から出来る一発屋化対策について、まとめてみたいと思います。
ラッスンゴレライの面白さの正体とは
正直、私はちゃんと面白いと思ったことは無いのですが、、、思うに、このネタの面白いところって、「ラッスンゴレライ」という言葉が「何なのか分からない」ところにあるんだろうと。
得体の知れないこの言葉が、様々な文脈で使われて、さも意味のある言葉のように機能するところが面白いところなのではないかと。
つまり、最初のつかみの時点で、「ラッスンゴレライ」⇒「?」という流れが無いと成立しないネタなわけです。
ブーム終焉の要因は面白さの勘違い
まだ出始めの頃は、「ラッスンゴレライ」という語感の新しさから、何も前振りをしなくてもお客さんの「?」は引き出せていたので、ネタとして成立していました。
しかし、そこからブレイク後の今に至り、「ラッスンゴレライ」の語感がある程度定着したといえる現在、お客さんの意識としては、
「ラッスンゴレライ」⇒「?」ではなく、
「ラッスンゴレライ」⇒「ああ、あれね」
になってきているのです。
すると、今までのように単なる「ラッスンゴレライ」の語感の面白さだけでは勝負が出来なくなってしまいます。
しかも、番組の司会者側も問題があります。
「今ブレーク中の8.6秒バズーカです!いやあ、すごいよなあ。みんな『ラッスンゴレライ』言うてるもんなあ。」
「じゃあ、早速やってもらいますか!?今流行の、ねえ。8.6秒バズーカで『ラッスンゴレライ』です。どうぞ。」
もはや、歌の紹介じゃねえかと。ネタ前に「ラッスンゴレライ」言い過ぎ。最悪の場合には「『ラッスンゴレライ』って何なの?何がきっかけでいい始めたの?」みたいなやり取りをしちゃったりする。
もう、この言葉が公知の存在にまで高まってしまっているんですね。
つまり、今までのように、ただ「ラッスンゴレライ」を唱えてネタを始めるだけでは、ウケるための必要要素であるお客さんの「?」が引き出せなくなっているのです。
再びネタの輝きを取り戻すにはどうしたらいいのか
「ラッスンゴレライ」の言葉そのものがコモディティ化し、面白さが引き出せなくなってしまった。
このネタが再び輝きを取り戻すには、以下二つの方法しか無いと思います。
- 十分な前フリをするネタにチェンジし、リズムネタ単発ではなく流れの中で出せるようにする。
- 「ラッスンゴレライ」のワードを捨てて、「様々な言葉をリズムに乗せてデタラメに解説するネタ」にチェンジする。
①十分な前フリをするネタにチェンジし、リズムネタ単発ではなく流れの中で出せるようにする。
これは例えば、冒頭に漫才部分をつけてネタをはじめるとか。コントの中で繰り出すとかが考えられます。
「いやあ、入学式のシーズンですね。」
「そうですね。僕ね、もう一回学生やり直したいね。」
「よし、じゃあ入学式からやり直そう」
「え?どういうこと?」
「じゃあ、俺が校長先生やるから、お前はラッスンゴレライ」
「え?え?なんて?」
「いや、ラッスンゴレライ」
「え?え?なんて?」
「ラッスンゴレライ!フー!ラッスンゴレライ!フー!」
とか。
ただ、これを実践するためには、本人たちが番組側に協力を要請する必要があるので、だいぶハードルが高いですね。
「最近、ラッスンゴレライが定着しすぎちゃっているので、前フリを付けたい」という意向を制作に理解してもらわなければなりません。しかし、テレビや営業の発注サイドとしては、求めているのは短尺のリズムネタとしての「ラッスンゴレライ」なわけなので、漫才師とかコント師としてのニーズは無い。そこをゴリ押すなら事務所側のプッシュも相当必要になると思われますね。
②「ラッスンゴレライ」のワードを捨てて、「様々な言葉をリズムに乗せてデタラメに解説するネタ」にチェンジする。
こちらもリスキーではありますが、まだ応用性が高いと思われます。
昨今増えている工場見学系の番組やロケ番組などで、その業界や地方ごとの聞き知らないワードないし方言が出てきたときに、それをリズムに乗せてデタラメに解説するという。
例:群馬ロケ
「郷土料理の『しもつかれ』でございます。」
「ちょと待て、ちょと待て、お兄さん」
以下いつもの。
この場合、事前の下準備とネタの作りこみは欠かせません。
今の寝る間もない忙しさの中、そこまでの準備が出来るかというと、しばらくは無理だと思われます。ですので、こちらも今のうちに制作側や芸人仲間(デビュー直後ではいないかもしれませんが)に刷り込みをしておいて、ひと段落の後にロケネタやひな壇ネタとして投下していければ道はあるかなと思います。
結局はいかにひな壇に座席を確保するか。
参考にするならノブシコブシ吉村だ!
色々言ってはきましたが、どんなネタにも賞味期限はあります。つまり、タレントである以上、結局はひな壇に座席をどう確保するかが一番重要です。
そこで、参考にして欲しいのは平成ノブシコブシの吉村さんです。
ノブコブ吉村氏は、当初こそ「破天荒」などという尖ったキャラで、場を荒らすことをよしとする芸風でしたが、最近の番組ではむしろ「破天荒」どころか「超優等生」です。誰よりも番組の成立を頭に置いて出演しているように感じます。
彼は「制作に喜ばれるひな壇芸」を磨きぬいたことで、今や各番組に欠かせない存在となっています。
彼のひな壇芸の特徴は、「大きな笑い声」と「トゲの無いガヤ」です。
誰よりも大きな声で笑い、ウケている感を演出し、スキマに求められている発言を入れてテロップに出るという。
この中で、8.6秒バズーカの二人がマネが出来るとすれば「大きな笑い声」しかないでしょう。
「ガヤ」は間の取り方やワードセンスなど、かなり高度なスキルを要しますし、なによりMCとの関係値も重要です。この関係値はデビュー直後の彼らに最も欠けている要素です。
芸人の中には関係値に関係なく、ガヤを放り込む名人もいます。その好例は、よゐこの二人。よーく目を凝らしてみるとめちゃイケでテロップに抜かれる発言はいつもこの二人の発言です。しかし、このレベルに至るのはまだ無理。
であれば、「大きな笑い声」で勝負するしかありません。
笑い声は番組全体を「乗せ」ます。現場も盛り上がりますし、ウケた実感を得ることで共演者もやりやすくなります。
番組を乗せてくれる出演者は重宝されますので、スタッフウケ、共演者ウケともに最良の方法です。ノブコブ吉村氏の他には、自分で言って自分で笑う有吉弘行のようなパターンもあります。
若手のお笑いの方はひな壇で何とか爪あとを残そうと、常に緊張してギラギラし、ライバルである他人のネタでは笑わなくなります。
でも、それは制作側やMCが求めているものとは違うのです。
とにかく、ひな壇に上がるチャンスを得たら「声を出して笑う」。
それを続けることでしか「一発屋」脱却の道は無いと思うのです。
DeNAのcomm終了の影でひっそりと終わったあのサービスの敗因
DeNAがLINEの牙城を切り崩すべく展開していたcommのサービス終了が決まりました。
開始当初から色々と問題のあったサービスでしたが、ついに…という感じですね。
さて、その影でひっそりとサービス終了を決めたサービスがあります。
「ランチ定期券」というサービスです。
ランチ定期券とは
ランチ定期券は500円の月額料金を払えば、提携しているレストランのランチを一律500円で食べられるというもの。
対応エリアは渋谷、中目黒、恵比寿あたりが中心のサービスでした。
一世を風靡した「ランチパスポート」のWEB版というようなサービスで、最盛期は3500人の有料会員がいたようですが、先日、会員向けにサービス終了を告げるメールが配信されていました。先月あたりから新規申込を停止していたため怪しいなとは思いましたが、残念ながらここでフィニッシュのようです。
そもそもランチパスポートとは
高知県のエリア情報を中心とした出版社「ほっとこうち」が発行したクーポン雑誌。
一冊1000円程度の書籍を購入すると、掲載さているお店のランチを一律500円で食べることができる。
<お客さんのメリット>
ランチが安くなり、数回使えば1000円分の元が取れる
<お店のメリット>
・掲載料無料で掲載でき、集客に繋がる
<ほっとこうち>
・高知のローカル企業のため自社だけでは全国展開できないが、「ランチパスポート」の商標使用料と独自の自動書籍化システムをパッケージ販売することで、直接取材できないエリアで出版された分も利用料収入が見込める
<出版社>
・商標使用料とシステム利用料は払うものの、自動書籍化パッケージの利用で編集コストを圧縮でき、大ヒット書籍「ランチパスポート」のネームバリューも手伝って書籍が売れる。
このように、四方よしのビジネスモデルだと言われています。
ただし、利用上の制限もあり、それが絶妙のバランスを生んでいるようです。
<利用上の制限>
- ランチパスポートの期限は3ヶ月
- 一店舗あたりの利用可能回数は3回まで
- 一冊の本で使えるのはその当人のみ
- 食べられるメニューはお店側が決める
一方ランチ定期券は
ランチパスポートをWEB化し、費用を安くすることで、ランチパスポートを購入していた層を抱き込む戦略でした。。
- 月額500円で色んなお店のランチが500円で食べられる
- 1ヶ月あたり3回まで利用可能(月をまたぐと権利復活)
- 一契約で使えるのはその当人のみ
- 食べられるメニューはお店側が決める
1000円の書籍⇒月額サービス500円
3ヶ月で3回⇒1ヶ月3回(しかも翌月権利復活)
というところが大きな違いで最大のウリとなっています。
サービスとしてのバリューは大きいですが、その分お店の負担も大きいサービスのように見えますね。
私も利用しましたが、その負担の大きさからか、お店によってお得感はまちまちで、1000円ランチが500円になる素晴らしいお店もあれば、600円のランチが500円になり、通常ならついているドリンクがランチ定期券では付かないなど、ほとんど得できないお店もありました。
ランチ定期券の敗因の推測
私が考える敗因の推測ですが、大きく以下三点かと思われます。
- 店舗側のリスクが大きすぎた
- 過大な営業負荷と獲得難航
- 性急過ぎたメディア露出
これらはそれぞれ連携した要因となっています。
1.店舗側のリスクが大きすぎた
成功したランチパスポートはクーポンの利用に3ヶ月という期限があり、その上で一店舗3回までです。おしなべればおよそ月一回程度となりますので、客単価が崩れるということにはなりません。
しかも、クーポン利用期限が終わっても本が手元に残るため、ガイドブックとしての役割も果たします。本に載ることのバリューが高い飲食業界ではかなり喜ばれているのではないでしょうか。
一方、ランチ定期券は1ヶ月3回。しかも毎月復活しますので、3ヶ月では9回のランチ提供が必要です。単純に言ってコストは三倍。客単価の崩れは確実に発生します。
しかも、WEBへの掲載はメニューの提供期間中のみなので、辞めてしまえば何も残りません。
また、ランチパスポートは1000円の元を取るための期間が3ヶ月と長いため、色々な店にチャレンジするだけの時間があり、良い意味で「お試し」需要の取り込みが可能でした。
ところがランチ定期券は、500円の会費が毎月かかるため、元を取るためには必然的に利用頻度が高くなります。利用頻度が高いこと自体は悪くないのですが、ランチは出社日ベースで概ね月20回しか機会が無いわけですし、掲載店舗も少ないので、割引率が良く、人気がある店舗に高頻度に行き、とにかく元を取ってやろう!という心理が働くことは想像に難く有りません。
頑張って料理を提供してくれる協力的なお店ほど、リスクが大きいという悪循環がそこに生まれます。
すると、ランチ定期券来店が多い店舗は費用対効果の悪さから掲載を終了するか、サービスをグレードダウンし、店舗が減りサービスが悪化すれば課金ユーザーも離れていくというスパイラルが発生します。
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2.過大な営業負荷と獲得難航
辞めていく店舗が出れば、その分拡充しなければサービスが維持できません。
書籍であれば売り切りなので、次号を出さなければ良いという判断や、十分な掲載数が確保できるまで次号を発行をしないなどの判断も可能ですが、月額サービスの場合は毎月お金をもらってしまっている以上、そういう判断は出来ません。
常に営業をかけ続け、新規店舗の開拓と既存店舗の繋ぎとめをしなければ、会員減に直結します。
しかし、店舗側もリスクと効果を比較して、リスクが過大である事は分かりますので、獲得そのものがかなり難航するわけです。
しかも、獲得できてもお試しで数ヶ月だけ…などの消極的な参入や、オープン直後で少しでも面が欲しいようなバリューの低い店舗ばかりとなる可能性が高いでしょう。
ランチ定期券も営業活動はかなり厳しかったのではないでしょうか。そもそも体制が整わないスタートアップでそれだけの営業コストを維持し続けることは相当困難だったと思われます。
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3.性急過ぎたメディア露出
上記のような状況が続くと、このような連鎖が発生します。
営業が追いつかない
↓
同じ店に集中する
↓
コストがでかくなりすぎる
↓
お店が掲載を辞める
↓
営業が追いつかない
↓
掲載数が減る
↓
同じ店に集中する
↓
以下繰り返し
つまり、お客様を満足させられるだけのサービスが用意できなくなるわけです。
しかし、この間にも精力的なメディア露出が行われ、スタートアップ系のWEBメディアだけではなく、テレビや雑誌などのマス媒体にも数多く取り上げられ、一時期かなり注目されたようです。
しかし、それら媒体を見てきたお客様の多くは、想像よりも整っていない実際のサービスを見て落胆して帰っていたのではないでしょうか。
近年、米国のスタートアップ企業の間で言われているのは、「スケール(拡大)しないことをする」ということです。
サービスが、マーケットに受け入れられる形になっていないのに、焦ってプロモーションに注力し必要以上の注目を浴びてしまうことで、せっかくの見込みユーザーとの接触が残念なものになってしまう。そして、一度残念な体験をしたユーザーは二度と帰ってくることはない。プロモーションの前に目の前にいる少数のお客様の体験を最善にする努力をしようぜということです。
多くのメディア露出によって増えたトラフィックにサービスが追いつかなかったため、結果的にサービスに注目してくれる多くの優良見込み客を逃し、マスに取り上げられ注目を浴びたがため、そのビジネスモデルを実態に即したサービスに改変することができなかったのではないかと思います。
近年、スタートアップ企業周りはだいぶプロモーション環境も整備されてきていて、横のつながりやパブリシティの融通などが活発に行われています。それこそ、昭和のテレビ業界のような、酒の席で仲良くなってそのツテでプロモーションしてという、前時代的な仕事の進み方が逆に幅を利かせているのが日本のスタートアップ界隈の現状です。そんなプロモーションをしやすい環境だからこそ慎重にタイミングを図る必要があったのではないかなと感じます。
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ランチ定期券が与えてくれた学び
ランチ定期券はサービス終了しますが、ランチ定期券の試みは様々な学びを提供してくれました。
- 店舗の参入メリットの重要性
- デジタルコンテンツに大事なのは「継続性」
- プロモーションタイミングが悪いと裏目に出ることがある
- ランチパスポートはやっぱり良く出来ている
これらの学びを生かして再チャレンジするプレイヤーが出てくると面白いなと思います。